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マナーとは何か?皆、他の星から来た宇宙人だと思うと気にならない説

マナーとは何か?

3連休の初日の土曜日に、仙台から東京ゆきの東北新幹線の指定席に座ると後ろの席には先客がいた。

座席に座って振り返り「倒しますね」と声をかける。座席を倒すときにひと言、声をかけるのはマナーだ。

後ろの乗客はキョトンとした表情をしていたが、そのときは特に気にしなかった。

ところが、だいぶ後になって堀江貴文さんのこんなツイート目にする。

これに対するネットの反応は、

  1. その通り!いちいち声をかける必要はない。意味がないマナーだとする「勝手に倒せ派」
  2. 声をかけられたくなければ自家用ジェットで行け!必要な気遣いだとする「声かけ派」

と賛否が真っ二つに分かれているようだ。

私は「声はかけるのがマナーだ」という風に親から教わって、それが当たり前だと思っていたので、声をかけられることを不快に思う人が相当数いることは新鮮な驚きだった。

人を不快にさせないためのマナーなのだから、人を不快にするようなマナーはマナーと言えるのだろうか?

逆に、マナーがあるせいで「マナー違反」が発生して、人は不快を感じやすくなっているのでは?

そもそもマナーとは何なのか。

昭和から平成で変わったマナー、新しく登場しつづける意味不明なビジネスマナーなどの事例から、本当にみんなが不快にならないためのマナーを考えてみた。


マナーとは何か?

違いがわかる辞典によると、マナーとは社会的に望ましいとされる約束事に沿った言動や態度、礼儀や作法のことで、ルールや規則ほど厳しくはないもののこと。

似た言葉の「エチケット」も礼儀・作法のことだが、人と接するときに相手を不快にさせない心配り・思いやりという意味合いが強く、「咳エチケット」など衛生に関わることに使われる。

「モラル」は、より広く一般的な倫理観や道徳意識を指し、法令遵守や公序良俗に反しない行動全般が含まれる。

例えば、食事中のマナー、エチケット、モラルの違いはこうなる。

  • 茶碗を持ち上げて食べるのはマナー
  • 食事中の人の前で鼻をかまないのはエチケット
  • 食い逃げしないのはモラル

目の前の人を思いやるのがエチケット、思いやりの気持ちを形式化・ルール化したものがマナー、エチケットやマナーを守ろうとし、人として正しい行動をしようとするのがモラルということになる。

マナーとは社会的なものなので、所属する社会によって、また個人間でも形式や捉え方に差異があり、時代によっても変化する。


変化するマナー

2019年現在、役所や病院、学校はほぼ「敷地内禁煙」になり、公共交通機関や飲食店も筋炎・分煙が徹底され、歩きタバコ禁止区域では外でも吸えず、タバコを吸うには喫煙スペースを探さなければならない。

居酒屋などタバコが吸える場所さえ、「吸ってもいいですか?」と吸わない人へ配慮をするのがマナーとされている。

しかし、喫煙に関するルールやマナーが厳しくなったのは最近のことだ。

昭和はどこでもタバコが吸えた。

会社のデスクや応接室、病院の待合室、電車やバスの中にも灰皿があって、吸わない人や子どもがいても平気でスパスパ吸えた。

健康意識の高まりから、先に法律やルールが作られ、後からマナーが教育・啓発されていった例である。

昔ながらの「吸うのが当たり前」の世代と、タバコは危険と教わって育った世代、愛煙家と嫌煙家はマナーをめぐってしばしば衝突する。

  • 電車の中でタバコを吸わなくても、直前に吸うと全身タバコ臭くなる。ルール上は問題ないが、不快に思う人がいるならマナー違反なのか?
  • レストランで禁煙席がいっぱいで、妊婦と小さな子どもが喫煙席に入ってきた。このとき、喫煙席でタバコを吸うのはマナー違反になるか?
  • 集合住宅のベランダや換気扇前での喫煙は禁止されていないが、近隣から「臭い」と苦情が来ている。マナーとして控えるべきか?

このように、ルールや習慣の変化に伴いマナーの認識にズレが生じる例は多い。

エスカレーターの片側空け論争
少し前までは急ぐ人のために片側を空けるのがマナーとされていた。これは第二次大戦中に英国で混雑緩和のために考案されたマナーで、日本では1967年の梅田駅で「片側空け」の呼びかけが始まったのが発祥と言われる。1980年〜1990年代以降全国に広まるも、事故の多発から「エレベーターでは歩かない」ルールが呼びかけられるようになった。

いきなり訪問・いきなり電話は失礼に
郵便が普及していなかった明治以前、人に会うにはその人の家に直接出向くしかなかったが、郵便や電話が普及すると「アポなしの来訪」はマナー違反となった。現在は更に手軽に用件を伝えられるメールやチャットが普及し「いきなり電話するのは相手の時間を一方的に奪う行為であり失礼」と感じる人が現れた。

URLではなく「スクショ」を送る
パソコンのメールで相手にネットの情報を送るとき、ページの本文やURL(アドレス)をテキストで送るのがマナーであった。スクリーンショットを取るのは手間だったし、容量の大きな画像は相手が受信できないこともあったため。ところが、デジタルネイティブな10代はURLをコピペするという概念を持たず、スマホで画面を保存した「スクショ」を送るのが一般的になっている。必要な情報だけを切り取って相手に探す手間をかけさせず、ギガ(パケット容量)不足にも配慮した、新しいマナーと言えよう。

「正しいくしゃみ」のやり方
欧米では、咳やくしゃみをするときは肘の内側を顔に当てるのが正式で、手のひらで顔を覆うのはマナー違反であるらしい。感染予防の点からも手にウイルスが付着するのは良くないということで、日本でも啓蒙されつつある。

このように自然発生的にできたマナー、または合理的な目的のために作られたマナーは、善し悪しは別にして意味は分かる。

ところが、世の中には「こじつけ」「言いがかり」のようなとんでもないビジネスマナーもはびこっている。


新しく登場したトンデモビジネスマナー

昔、『HOTEL』というドラマでこんなストーリーがあった。

結婚式の衣装(だったかな?)を入れた箱に、うっかり裁ちバサミが入ったまま渡してしまった。

新婦のお父さんは「縁起が悪い、こんなホテルでの式はキャンセルする!!」と激怒。お詫びしても怒りは収まらない。

そこで主人公は、
「ハサミは2枚の刃が組み合わさって、初めて使える。結婚も2人の人が力を合わせてやっていくものです」
といったような、とんちを披露してピンチを切り抜ける。

異物混入はハサミでなくても仕事としてはダメなことだが、結婚に関して「切れる」を連想させるものは縁起が悪く、特に不快感を感じる人がいる。

そのため、新生活に便利であろう包丁やキッチンバサミは結婚祝いには送ってはいけないし、結婚式では「切れる」「重なる」「死」などを連想する言葉も使ってはいけない。

なぜなら、それがマナーだから。

友人がスピーチでうっかり「くれぐれも幸せになってほしいです!」と忌み言葉を言ってしまったりなんかすると、嫌みに聞こえてしまう。

もしも、それがマナーだと知らなかったら全く気にしなかったのに。

それ自体は不快でないはずなのに、「マナー違反」だから不快になる、マナーのための不毛なマナーが増えている気がする。

ご苦労様・了解は目上の人には失礼、が浸透。
渡しが子どもだった1990年代、郵便屋さんが来たら「ごくろうさまです」と挨拶するように教わった。しかし現在はマナー違反になっている。ご苦労様は目上の人に使ってはダメで、「お疲れ様」と言わなければならない。同様に、「了解しました」も失礼で、正しくは「承知しました」である。いずれも言葉の意味は同じだ[1]

ノック2回はトイレと同じで失礼?
面接で入室する際、コンコンと2回ノックすると「ここはトイレじゃないぞ」と怒る人がいるらしい。国際基準のプロトコールマナーを根拠にしていると言うが、これはガセ。欧米ではトイレのドアをノックする習慣はななく、ノック2回=トイレのノックの出所は不明である[2]

取引先で出されたお茶には手を付けてはいけない?
「出されたお茶を飲むのは失礼」というマナーがあるらしいが、これには諸説ある。
相手に勧められるか、相手が手つければ飲んでも良い
飲み干すと相手にお代わりの心配をさせるので3分の1ほど残す
片付けやすいように飲み干す、など。[3]
相手の解釈しだいでは、何をしてもマナー違反になる可能性がある。

とっくりは注ぎ口から注いではいけない?
とっくりのお酒は注ぎ口から注ぐと「縁(円)の切れ目や角が立つ」の意味になり縁起が悪い」と日本酒の専門家がテレビで語りインターネットで話題になった。これも諸説ありで、決して一般的なマナーではないようだ。

判子は上司にお辞儀をするようにナナメに
金融業界の一部では、稟議書などのハンコを押すときに左ナナメに傾けて押す慣習があるらしい。なんでも、「おじぎ」しているように見えるのだそう[4]。一般には真っ直ぐ押すのがマナー。

出所不明でネタのようだが、それがマナーだと思っている人たちが存在し、その人達を不快にさせないようにとマナーはどんどん一般化し、増殖していく。


マナーが無限に増殖する背景

なんでこんな訳の分からないマナーが広まってしまうのかというと、インターネットとマナー講師相乗効果でローカルマナーが一般化されやすいのではないかと思う。

昔なら、いち会社内、あるいは業界、地域だけのローカルマナーであったものが、インターネットで情報が拡散するようになり全国区・グローバルになってしまったのでは?

金融業界のはんこの例も、Twitterなどで拡散したことにより「そういうのがマナーなのか」って真に受けて採用しちゃう人や会社もいるのではないか。

そして、その状況はマナーを生業としているマナー講師業界にとっては美味しい話なのではないか。

たとえば、コンビニ業界では「恵方巻き」の例がある。

あれは1990年代までは関西の地方のローカルイベントだったのを、コンビニ業界が全国区のイベントに仕立てたものである。

目的は、消費を喚起するために違いない。

何もなければ、1,000円以上する海鮮太巻きを食べたい、と思う機会は一生のうち一度もないかもしれない。

しかし、「節分の日は恵方巻き」というようにイベントになると毎年買いたくなってしまうのだ。

マナーも、みんなが知っている話ばかりでは新しい本やセミナーが売れない。

まだ多くの人が知らない新しいマナーを、海外や色んなローカルネタから仕入れて、商機を作っているのだ。

ジユウケイザイなのでマナー講師にもじゃんじゃん稼いでもらって構わないのであるが、あまりにも変なマナーが増えすぎると少々迷惑してしまう。

マナーのためのマナーが増えすぎると面倒だし、マナーを知らない・守らない人にもイライラしてしまい、衝突の元になる。

では、どうすればいいのか?


解決策は「みんな宇宙人」だと思うこと

マナーはなるべく守った方が良いが、人のマナー違反に寛容であるべきだ。

もともと、マナーは法律や規則ではなく、相手を思いやって自主的に行うもの。人それぞれマナーの解釈は異なるし、マナーを違反したところで罰することはできない。

自分は自分、相手は相手。みんな違う文化背景を持ち、違う常識の元に生きている。

では、「相手は外国人だ」と思ったらどうか? というと、「ここは日本なんだから日本のルールに従えや!」と自分ルールに従わせたくなってしまうのでよろしくない。

そこで、私が提案したいのは「相手も自分も、別の星から地球にやってきた宇宙人なんだ」と思うことだ。

私の星では、新幹線で座席を倒すときは後ろの人に声をかけるのがマナーだった。

地球のルールは知っている。

ルールブックには、特に「声をかけろ」とも「話しかけてはいけない」とも書かれていないから、どちらもマナーの範疇になる。

コーヒーを飲んでるようだから声をかけた方が相手に不快感を与えないのではないか、と判断して「倒しますね」と声をかけてみた。

相手はキョトンとしていたけれど、きっと相手の出身の星では黙って倒すのがマナーで、知らない人に話しかけるのは失礼だったのかもしれない。

相手にはちょっと不快な思いをさせてしまったかもしれないけれど、「ルール違反」ではないから気にすることはない。

逆に、前の人が黙って座席を倒しても、その人の星ではそれがマナーなのかもしれないし、地球の「ルール違反」ではないから気にしなくて良い。

お互いに思いやった結果、それでも不快に思ったり、思われたりすることもあるけど、相手も自分も悪くない。

ルールの範囲内で、自分の星のマナーを押しつけず、相手の星のマナーを許容すること。

みんな宇宙人。わけわかんないし、話も通じないし、マナーも違うけど、お互い大目に見ようよ。

これができれば、きっと、もうちょっと楽に電車に乗れると思うんだ。

「マナーを振りかざして相手に不快な思いをさせる人」は、マナー違反である。しかし、ルール違反ではないので許してあげよう。

彼らの星では、理由が分からなくてもマナーを守ることがすごく重要なんだろう。

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